あふれる涙のドロップス
「武藤……?」





 僕のかすれた声が、教室に響いた。





「何………が起きてたんだ……?」




 
 だんだんとうつむく武藤は、「ごめん、立川」と呟いた。





「……何が起きてたんだよ?部長……リンに何しようとしたんだよ!」





 いつになく荒い僕の声に、部長の肩が、ビクッと震えた。




「……この人に、キス、されそうになった」




 リンが、静かに言った。




「この人に、急に連れて来られて、キス、されそうになった」




 僕は、息を呑んだ。




「キス……?」





 よくわからない。状況が飲み込めない。





「キス、って、どういうこと、だ、部長」



 
 動揺により、途切れ途切れになった、僕の質問に、武藤はなかなか応えようとはしなかった。
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