あふれる涙のドロップス
「……ごめん……」




 不意に、かすれた声で立川くんが言った。




「無理、だ。好きな子が、いるんだ」



 
 アタシが上を向く前に、立川くんは理科室の戸口へと向かった。




「なーんだ。あんたこのあたしをフッちゃうような奴だったんだ。もっとマシな奴かと思ってた」




 気づけば、そんな言葉が口から飛び出ていた。まるで、心と身体が離れていくようだった。




「……は?」




 立川くんが振り返った。




「だってぇ、あんたあたしのことフッたでしょ?あたしってオトコのコにモテるわけぇ。そんなあたしをフッちゃっていいの?」




 ヤバい。止まらない。




「そんなナルシストなお前を彼女にするつもりは一切ない」




 アタシは。アタシの口は、いくら止めようとしても、止まらなかった。




「ふーん。じゃ、あんた自分がどうなっちゃってもいいわけね。ま、あたしのことフッタ奴、どうなろうと、ホントどーでもいいんだけど」



< 70 / 145 >

この作品をシェア

pagetop