終わらない恋
芦澤は少し機嫌の悪そうな顔をしてから小声で「あれ」とつぶやいた。



芦澤の指を指す方向を見た。


駅の前には大きな屋敷が立っていた。




「まじで?!めっちゃ大きいじゃんかぁ。」



私は目を丸くして見ていた。



「ばあちゃんの家だからな。」



「へぇー…。何でおばあちゃん家に住んでるの?」




芦澤の顔がなぜか一瞬曇ったように見えた。



「親父が死んだからお母さんと2人で引っ越した。」


「あ……ごめん。」




「いいって。てか、小さい頃によくはなと一緒に来たなぁ。」




――はな……



その言葉に自然と胸が痛んだ。



「じゃあ帰るね。」




「おう。」



私は点滅している信号を急いで渡った。



芦澤は一歩遅れて渡れなかった。



そして私は後ろを振り向かずに歩き出した。
< 45 / 98 >

この作品をシェア

pagetop