彼の遊戯
壊れた関係
「何で……?もう、いいでしょ…」
「だめ。今度はもっと恥ずかしいことするんだから」
耳元に近づけられた唇が発する少し掠れたその声に、ぴりぴりと耳が痺れていくような気がしてくる。
首をふるふると横に振って逃れようとしても逃がしてもらえず、意地悪くふきかけられる息に身体を震わせた。
「いや………、んぅ、」
ピクピクと反応する私に彼が笑んだのが、吐息でわかった。
思わず、胴を強く抱く腕にしがみつくと、
「ね。いいでしょ?さえちゃん?―――紗江子」
ズルい。
こういうときばっかり、そんな甘い声。
私の方が年下なのに、彼の方が年上なのに。
彼自身が私を脅すことでこういう関係になったんだから、命令すればそれでいいのに、――――私に対してもっと効果的なやり方を、彼は熟知しているんだ。