君と歩く未知
死体の本人確認はお母さんが搬送されたのとは別の病院で行なわれた。
第一発見者が一応、救急車を呼んでくれたらしい。
…やっぱり、お父さんは真っ白で、もう目を開くことは二度となかった。
アタシが…追い詰めて殺したお父さん。
「…ねぇ、お父さん、ごめんね、アタシのせいで死んじゃったんだよね?お父さん、ねぇ、返事してよ!お母さんは元気になったんだよ!お父さんは人殺しなんかじゃないよ!…人殺しは…お父さんを追い詰めて殺しちゃったのは…アタシなんだよね。…こんな娘で、ごめんね…」
アタシはお父さんの冷えた大きな体にすがって泣いた。
アタシは…これから、お父さんの悲しみを背負って生きて行かなくちゃいけない。
お父さんも、お母さんを殺したって思い込んだまま、その悲しみを背負って…死んだんだ。
「…おとうさん…アタシも、しにたい。…アタシが…おとうさんをおいつめちゃったから。だから…おとうさんを、ころしたのは、アタシ…。アタシが…ひとごろし」
アタシは泣きながら声を絞って言った。それを聞いていた刑事さんはアタシの肩をトントン、と叩いた。
そして優しい口調でゆっくり言った。
< 10 / 202 >

この作品をシェア

pagetop