君と歩く未知
 アタシは30分ほど駅で美和ちゃんを待った。
その間にアタシは何度もカズくんに電話をかけようとした。
…でも、結局かけられない。
これは、アタシがカズくんに対する隠しごとだ。
でも、言えるわけない。
カズくんに嫌われたくないんだ。
せっかく出会った運命の人だもん、別れたくない。
 「弥生ちゃんっ!弥生ちゃーんっ!」
美和ちゃんの叫ぶような声が聞こえる。
アタシが顔を上げると美和ちゃんはキョロキョロとアタシの姿を捜していた。
アタシは立ち上がって美和ちゃんと同じくらい大きな声を出した。
「美和ちゃん!!」
美和ちゃんはアタシの方に振り返って、涙をダラダラ流しながらアタシの元へ駆けて来た。
アタシは思わず美和ちゃんに抱き付いた。
そしてそのまま人目もはばからず大声で泣いた。
美和ちゃんはそんなアタシに何も言わず、優しく背中を撫でてくれていた。
アタシの心が少しだけ軽くなった気がした。
 それからしばらくして、アタシは美和ちゃんと一緒にアタシの家に帰った。
「…ここだよ、入って」
アタシは自分の部屋まで美和ちゃんを案内した。
美和ちゃんに言われて、アタシはシャワーを浴びた。
…脱衣所にある鏡でアタシは気付いた。
アタシの顔は殴られてアザだらけになってしまっていた。
体にも所々にアザと引っ掻き傷が残されていて、悲しみに襲われた。
こんな顔も体もイヤだ…
一年前にアタシと家族を襲ったあの事件がフラッシュバックしてしまう。
 アタシは美和ちゃんと向き合って、話をした。
殴られて痛かった…
殺されそうで怖かった…
胸が苦しかった…
そして、カズくんに嫌われるのではないかと恐れていることを。
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