君と歩く未知
「弥生さんは、お父さんが死ぬ直前に何を言ったの?」
アタシは泣きながら答えた。
「『人殺し』…『もうアタシの親じゃない』…『二度とアタシの前に現れないで』…って。アタシ、あの時はお母さんが本当に死んでしまったと思ってたんです…。だから…アタシ、お父さんにそんなこと言って…」
アタシは刑事さんにそう話してから荒く涙を拭った。
刑事さんはゆっくり口を開いた。
「…そうか、それはお父さんは悲しかったかも知れないね。…でも今さっき弥生さんが『死にたい』って言ったことの方が、お父さんにとってはよっぽどショックだと思うな」
アタシは顔を上げて刑事さんを見た。
「だって、親は自分の命より、子どもの命の方が大事なんだから。だから『死にたい』なんて言うな、お父さんに酷いことをしたと思うなら、お父さんの分もしっかり弥生さんが生きなさい」
アタシの目に、さっきとは違う涙が溢れた。
「…はい」
アタシは返事をした。
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