君と歩く未知
 遠くの方でチャイムが鳴っている…
これは夢?現実?
アタシはぼんやりした頭で考える…
あ、そうだ、ここは美術室だ!
アタシは慌てて目を開けた。
カズくんはアタシと目が合うとニッコリ笑った。
「ヤバいっ!チャイム鳴ってるよ!授業始まっちゃった、これじゃあ遅刻だよっ!」
カズくんは笑ってアタシに言った。
「イヤ、今のは二校時目が終わったチャイム。つまり、オレらはすでに遅刻してるわけ」
アタシは肩を落としてカズくんに言った。
「もー!なんで起こしてくれなかったの!?」
カズくんは少し照れて素っ気なくこう言った。
「弥生が疲れて体壊したら困るだろ!なぁ、赤ちゃんっ!」
そう言ってカズくんはアタシのお腹に向かって言った。
「わかるのかな。オレが父親だってこと」
アタシはなんだか穏やかな気分になった。
「わかってるよ、きっと…」
そしてアタシたちは短いキスをした。
幸せが溢れて止まらない。
「あ!そうだっ!ごめん、アタシ今日の帰り美和ちゃんに会うよ。妊娠の報告、まだしてないんだった!」
「そうだな、美和には早く伝えてやったほうが良いよ、弥生の唯一の女友達だし。まぁ、近いうちに直紀と竜平にも報告しよう」
アタシは大きく頷いて、カズくんの手を引いた。
「ほらっ!早く授業行かなきゃ!単位もらえないよ!?」
カズくんは笑ってアタシの頭を小突いた。
「てゆーか、オレら単位いらねーじゃん。退学するんだし」
アタシはケラケラ笑った。
「そーだねっ!!」
でも、アタシたちは先生の目を気にして一応それぞれの教室へ向かった。
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