君と歩く未知
 放課後の誰もいない美術室で、アタシは一人で美和ちゃんを待っていた。
朝カズくんと別れてすぐに、美和ちゃんにメールを打った。
<美和ちゃんに報告がありま~す♪
今日の放課後美術室に来てください!!>
「報告」って言っても、まさかアタシが妊娠したなんて思っていないよね。
美和ちゃんは、アタシが妊娠したって言ったらどう思うだろう?
しかも産むつもりって言ったら、何て言うだろう…
きっと驚くだろうな…
でも、美和ちゃんならきっとアタシたちを応援してくれるよね。
アタシは微かな不安や期待で胸がいっぱいだった。
 その時、この教室のドアが開いた。
「はろ~♪どーしたの?あんな意味深なメール送って来て!」
入って来たのはやっぱり美和ちゃんだった。
美和ちゃんはすごく短いスカートで、ドカッと机の上に腰掛けた。
アタシもその隣に腰掛けて、一回深呼吸した。
「びっくりしないで聞いて欲しいんだけど…」
美和ちゃんは大きな目でアタシの目を見つめる。
「あのね、昨日わかったんだけど、アタシ妊娠しちゃったんだ…」
その言葉を発した途端、美和ちゃんの目から光が消えた。
アタシはそんな美和ちゃんの態度に焦って、口をパクパクさせた。
「あ、あのね、アタシ…カズくんの子だし、産みたいなって思ってるの…」
美和ちゃんは首をかしげる。
アタシ、何かおかしいこと言ってる?
美和ちゃんは絶望した目のまま、アタシに聞いた。
「弥生ちゃん…いつ和哉とヤッたの?」
アタシは少し考えてから、
「一週間前だよ」
と、何のためらいもなく答えた。
美和ちゃんは言い辛そうに声を震わせながら言った。
「…それって、違うと思う」
アタシは首をかしげた。
「何が?」
美和ちゃんはしっかりアタシの目を見て言った。
「その赤ちゃんは…レイプされた時にできたんじゃないかな…」
アタシはショックで目の前が真っ暗になった。
でも、すぐに美和ちゃんに反論を始めた。
「何で?どうして美和ちゃんにそんなことわかるの?この子は、カズくんの子だよ!だって…レイプに合ってから二週間も経ってから…だから、この子はきっと、カズくんとアタシの…」
美和ちゃんの目には涙が溜まっていた。
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