君と歩く未知
 美和ちゃんは涙声になりながら「違うよ」とつぶやき、首を横に振り続けた。
アタシはすでに涙を流して取り乱していた。
「違わないよ!…この子は、アタシとカズくんの愛し合った証なんだよ!?…この子は、アタシとカズくんの子だもん…!」
美和ちゃんはそんなアタシの肩を抱いて言った。
「ヤッて一週間じゃ、赤ちゃんは出来ないんだよ…」
アタシはそんな重たい現実を受け入れられず、泣き叫んだ。
「嘘だよ…そんなのイヤだよ…、赤ちゃん、産んであげたいよ…」
美和ちゃんの目からも涙がこぼれているように見えた。
美和ちゃんはアタシの涙を拭って、手を握った。
「弥生ちゃんの家に、保険証はある?…これから二人で病院に行こう。先生にちゃんと診てもらって、教えてもらった方が良いよ」
そう言って、美和ちゃんは泣いてよろめくアタシを支えながら電車に乗ってくれた。
アタシはぐったりして、電車の座席に座っていた。
この赤ちゃんは、カズくんの子じゃないのかも知れないなんて…
そんなの、きっと嘘だよ。
何の根拠もないけれど、そんなの嘘だよ。
アタシは、最後まで信じてるから。
電車の外から見える青い空はとても澄んでいるのに…
どうしてアタシの心はキレイになってくれないの…?
右手で、お腹を撫でた。
ねぇ、赤ちゃん、お母さんはどうすればいいのかな?
アタシは心の中でそうつぶやいた。
美和ちゃんはそんなアタシの左手をぎゅっと握り締めてくれた。
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