君と歩く未知
 しばらく二人で泣いて、カズくんは立ち上がった。
「…じゃあ、これでホントにお別れだな…」
アタシはカズくんにしつこく聞いた。
「本当に辞めちゃうの?」
カズくんは何も言わず頷いた。
「アタシ…カズくんと一緒にいて、本当に幸せだったんだよ…嘘なんかじゃないんだよ」
カズくんはまた無言で頷いた。
そして悲しげに言った。
「オレもだよ。じゃあな…」
カズくんは歩き始めてしまった。
アタシから遠ざかっていく、愛しい人。
ずっとずっと好きな人。
 アタシはもう叶わないとわかっていながらカズくんに向かって叫んだ。
「カズくん!」
カズくんはアタシの声に気が付いて振り向いた。
「アタシたち…もう一度やり直せないの?もう一度…前みたいに笑い合えないの?」
カズくんはニッコリ笑ってアタシに手を振った。
 …アタシの胸に乾いた風が吹いた。
カズくんとやり直すことが、どんなにもがいても、もう叶わない夢だと言うなら…
カズくんがくれた思い出を大切にしなきゃね。
もう二度と目にすることのない、大好きな人の顔。
もう二度と聞くことのない、大好きな人の声。
そして、もう二度と触れることのない、大好きな人の愛。
全てを心の中にしまっておこう。
大好きな…カズくんと過ごした日々を。
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