君と歩く未知
慌しく走る音がして、ガチャッ…とこの小さな部屋が開く音がした。
「あれっ?何、ここ?今日って美術部活動の日だったっけ?」
アタシは驚いて振り返った。そこにはアタシよりずいぶん背の高い男の子が立っていた。尋ねられたみたいだけど、話したくもないし。アタシは無視して顔を絵の方に戻して、また絵の続きを描き始めた。
「まぁ、なんでもいっか。ちょっとここに隠れさせて、今校内でかくれんぼしてっから。こんなところに部屋があるなんて誰も気付かねーだろうし」
アタシは怪訝な目で一瞥して、また絵の続きを描き始めた。
「オレ、一年三組の木塚和哉。あんたは?一年だろ?」
アタシは木塚の方を一切見ずに答えた。
「二組の小林」
木塚は「ふぅん」と言って、また尋ねた。
「下の名前は?」
「教えたくない」
「なんで?」
「知る必要がないじゃない。わざわざ教える必要もないし」
木塚は少し笑った。そしてアタシの後ろまで来て絵を見た。
「何描いてるの?」
「わかんない」
「わかんないのに、描いてるの?」
アタシは頷いた。木塚は言った。
「なんでこんな意味不明な絵を描くのさ?」
「白が嫌いだから。白い画面を塗りつぶしてる」
「なんで白が嫌いなわけ?」
アタシは少し戸惑ってから、言った。
「教えたくない」
「あんたそればっか」
木塚は窓を開けた。生ぬるい七月の風が滑り込んできた。
「小林、オレ小林が独りで寂しそうにしてんの見たことあるんだけど」
「寂しくなんかないのに」
「寂しいに決まってんだろ、それういう性格、やめろよ。素直になれよ」
アタシは顔を上げて、木塚の顔を睨んだ。それでも木塚は続けた。
「そうやって独りぼっちで生きていくのって、多分すっごくつらいぞ」
アタシは木塚に言った。
「そんなのわかってるよ、木塚にあたしの何がわかるの?今、たった今出会った、しかも木塚みたいに何の苦労もしていないヤツにそんなこと…言われたくない」
木塚の目から光が消え、幻滅したようにうつむいた。アタシは言った。
「ごめん、忘れて」
アタシは絵の具と筆を置いた。
アタシはそう言って部屋を出た。走って美術室を逃げるように飛び出た。
「あれっ?何、ここ?今日って美術部活動の日だったっけ?」
アタシは驚いて振り返った。そこにはアタシよりずいぶん背の高い男の子が立っていた。尋ねられたみたいだけど、話したくもないし。アタシは無視して顔を絵の方に戻して、また絵の続きを描き始めた。
「まぁ、なんでもいっか。ちょっとここに隠れさせて、今校内でかくれんぼしてっから。こんなところに部屋があるなんて誰も気付かねーだろうし」
アタシは怪訝な目で一瞥して、また絵の続きを描き始めた。
「オレ、一年三組の木塚和哉。あんたは?一年だろ?」
アタシは木塚の方を一切見ずに答えた。
「二組の小林」
木塚は「ふぅん」と言って、また尋ねた。
「下の名前は?」
「教えたくない」
「なんで?」
「知る必要がないじゃない。わざわざ教える必要もないし」
木塚は少し笑った。そしてアタシの後ろまで来て絵を見た。
「何描いてるの?」
「わかんない」
「わかんないのに、描いてるの?」
アタシは頷いた。木塚は言った。
「なんでこんな意味不明な絵を描くのさ?」
「白が嫌いだから。白い画面を塗りつぶしてる」
「なんで白が嫌いなわけ?」
アタシは少し戸惑ってから、言った。
「教えたくない」
「あんたそればっか」
木塚は窓を開けた。生ぬるい七月の風が滑り込んできた。
「小林、オレ小林が独りで寂しそうにしてんの見たことあるんだけど」
「寂しくなんかないのに」
「寂しいに決まってんだろ、それういう性格、やめろよ。素直になれよ」
アタシは顔を上げて、木塚の顔を睨んだ。それでも木塚は続けた。
「そうやって独りぼっちで生きていくのって、多分すっごくつらいぞ」
アタシは木塚に言った。
「そんなのわかってるよ、木塚にあたしの何がわかるの?今、たった今出会った、しかも木塚みたいに何の苦労もしていないヤツにそんなこと…言われたくない」
木塚の目から光が消え、幻滅したようにうつむいた。アタシは言った。
「ごめん、忘れて」
アタシは絵の具と筆を置いた。
アタシはそう言って部屋を出た。走って美術室を逃げるように飛び出た。