君と歩く未知
 「弥生!」
校門を出てすぐのところだった。
アタシの名前を大声で叫ぶ声が聞こえた。
アタシは、はっとして振り向いた。
「弥生!」
カズくんがアタシの方へ走って来てくれたんだ。
だけど、アタシはそんなカズくんに言った。
「来ないで!お願い…来ないで…」
アタシはそう言うと、涙が止まらなくなり、目を荒く擦った。
カズくんはその場にどうしようもなく立ち止まり、そんなアタシの姿をじっと見ていた。
ずいぶん離れているから、カズくんがどんな表情をしているのかはわからない。
だけど、きっとこんなアタシに愛想を尽かしてしまっただろう。
自分の体を自分で傷付け、そして自殺しようとしている面倒くさい女だもん。

 アタシの目から…二度と流さないようにしようと誓っていた涙が、いとも簡単に流れた。
…アタシの中でカズくんっていう存在がどんなに大きくて、大切なものか初めて気付いた。
もう、止められない。
アタシの涙はもう、誰にも止めることはできないだろう。
< 28 / 202 >

この作品をシェア

pagetop