君と歩く未知
 アタシたちは電車を降りて、海岸沿いの道を歩いた。
波の音が心地よくて、やっぱり会話はなかった。
カズくんの手をずっと握ってカズくんの斜め後ろを歩いていた。
しばらく歩くと、砂浜へと続く階段が見つかった。
「ねぇ、カズくん!あれ、階段!」
カズくんは階段に気付くと「よっしゃ!」と言って駆け出した。
アタシの手を引いて階段を駆け下りて行く。
砂浜まで降りると、海はアタシたちの目の前に現れた。
人気のない砂浜に、制服のアタシたちは浮いていて、たまに昼間に月が見えることがあるけど、それみたいだった。

 「わぁ!海って、アタシ何年ぶりだろう」
アタシはそう言って、靴と黒のハイソックスを脱ぎ散らした。
そして、制服のスカートを濡らさないように気を付けながら、海へ入って行った。
「ねぇ!カズくんもおいでよ!冷たくって気持ち良いよ!」
アタシが無邪気に叫ぶと、カズくんが言った。
「弥生!今までの性格とのギャップが激しすぎるんだよ!」
アタシはそれを聞いてケラケラ笑った。
カズくんは靴と靴下を脱ぎ、制服のズボンの裾を膝くらいの高さまで捲り上げ、アタシの近くまで来た。
そして、カズくんは水を蹴ってアタシにかけた。
「もう!なにするんよ!制服にシミになるっつーの!」
「今さら何言ってんだよ!弥生の制服、もうすでに絵の具だらけじゃん!」
そんなことを言うカズくんにアタシも水をかけた。
しばらくそんなやり取りが続いた。
カズくんもアタシも子どもみたいにはしゃぎ続けた。
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