君と歩く未知
少し遊びつかれて、アタシが立ち止まって太陽を見た時だった。
「もう、太陽が真上だね。お昼時だ。お昼ご飯どうす…」
そんな何気ない会話をアタシが口にしたとき、後ろから突然、カズくんが抱き付いてきた。
アタシが突然立ち止まったから、背中にぶつかったのかな…なんて思ったけど違ったみたい。
カズくんはアタシに抱きついてなかなか離れてくれない。
それどころか、幼い子どもみたいに顔をアタシの背中に押し付けてきた。
「…カズくん?」
アタシはびっくりして、カズくんを少し上ずった声で呼んだ。
だけど、カズくんは離れようとしない。
汗ばんだ体を密着させて全く動かない。
アタシが、もう一度、呼びかけようとした時、カズくんの口が開いた。
 「ねぇ、弥生…。弥生と、弥生の家族に一体何があったの?…どうして弥生は今まであんな悲しい生き方をしてきたの?…他人のオレに言いたくないかも知れないけど、お願い、話して。…オレ、不安で仕方ねぇんだ…だらしねぇよな」
カズくんはそう言って、アタシからいったん離れて、アタシの前に回ってきた。
カズくんは真っ直ぐな瞳でアタシを見つめた。
アタシもカズくんを見て、ゆっくり頷いた。
すると、カズくんは何も言わず、アタシを優しく抱きしめて
「ありがとう」
と、言った。
「ありがとうって言いたいのはアタシだよ。…話し始めるチャンスを探してたの」
アタシはいつもより素直な言葉がスラスラ口から飛び出るのに自分で少し驚いた。

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