君と歩く未知
 放課後、いつもの美術室の小さな部屋でアタシとカズくんは頭をひねっていた。
「何か良い構図浮かんだ?」
アタシは部屋の熱気を飛ばすために部屋の天窓まで開けようと、棚によじ登りながらカズくんに尋ねた。
「う~か~ば~な~い~」
カズくんは自分の家から持参した扇風機に向かってしゃべった。
そのカズくんの間抜けな声のせいでアタシは文化祭に向けての意欲を喪失した。
文化祭に向けての意欲なんて最初からあったかどうか疑問だけど。
アタシが背伸びして天窓の鍵がやっと開けられた時、カズくんが言った。
「あっ!良いこと思いついた!」
アタシはとっさにカズくんの方に振り向いた。
「どんなの?!」
カズくんはニコニコしながら言った。
「弥生が今まで描いた作品を文化祭用ってことにして展示すればいい!」
堂々とそう言い切ったカズくんに、アタシはあきれてため息が出た。
アタシは天窓を開けてから言った。
「もちろん、アタシが今まで描いた作品も出すよ。でもね、アタシが入学してから描いた作品はたったの三枚よ?そりゃ、美術部の部員全員が絵を描いていたら三枚でも十分だけど、先輩たちはみんな写真専門で写真ばっかり撮ってるんだよ?文化祭にも写真を展示するって言ってるし…だから、絵が三枚じゃ足りないの!絵のない美術部って何なのさ!」
カズくんはいったん納得したように頷いた。
だけど、すぐ驚嘆の声をあげた。
「ってゆーか、弥生、まだ三枚しか描いてないの?!」
「だってアタシ、一枚描き上げるのにかなりの時間かける方だもん」
「じゃあ、本気でヤバイじゃん!」
「だからヤバイって言ってるじゃん!」
アタシはそのまま棚の上に座ってカズくんを見下ろした。
カズくんはことの重大さにやっと気が付いたみたいで真剣な顔をして悩んでいる。
棚の上で足をブラブラさせているアタシと、頭を抱えて悩んでいるカズくん。
比べものにならない対比をして、アタシは少し笑った。

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