君と歩く未知
 アタシはとりあえず、絵の具を取り出して真っ白な画面に色を付け始めた。
有名な画家の作品を模写してみようかとも思ったけど、アタシは基本的に模写はしない。
こんなアタシでも自分の世界を持っているから。
アタシはアタシの世界を確立するの。
だから、模写はしたくない。
「何か構図が浮かんだわけ?」
カズくんはアタシに向かって尋ねた。
「うん、ちょっとね」
アタシはパステルっぽいピンクを作った。
こんな可愛らしいピンクを使うのは初めてかも知れないな。
「その色からして、またドリーミーな絵を描くわけ?」
「まあね」
カズくんは突然立ち上がった。
「オレも良いこと思いついた」
そう言って黒鉛を持って来て、アタシからかなり離れたところで作業を始めた。
「デッサン?何描いてるの?」
カズくんはその辺の人より絵は上手かった。
多分、デッサンで同じものをモデルにしてもカズくんはアタシより上手く描くだろう。
だからアタシは初めてカズくんの絵を見たとき決意した。
アタシは絶対に風景画は描かないようにしようって。
…だって、カズくんと比べられて、劣ってるって思われたらヤダもん。
「ん?見たときのお楽しみ」
カズくんは決してアタシに何を描いているか教えてくれなかった。
アタシが見に行くと、カズくんは慌てて追い返す。
だからアタシも諦めて見ないことにした。
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