君と歩く未知
 それから、アタシたちは忙しい日々を送ることになった。
毎日毎日ただ絵を描いて、ときどきふざけて二人で笑いあったり、夜八時まで校舎の中にいて隠れて下校したり…そんな慌しくも充実した日々をアタシたちは過ごしていた。

 夏休みが目前の放課後のことだった。
カズくんは数学の期末テストの点数が悪かったせいで補習に出ることになってしまった。
先生曰く、「補習に呼ばれた生徒は、非常に点数が悪かったということだ」とのこと。
だから、アタシはカズくんが補習を受けることになったとき、苦笑いしかできなかった。
 そのせいでアタシはその日一人で美術室に向かうことになってしまった。
だけど、アタシはその部屋の異変を見つけてしまったの…
カズくんがつい昨日まで描いていた絵がなくなってしまっていたんだ。
アタシは、泥棒でも入って持って行っちゃったのかなって思って一生懸命探してたんだけど、他になくなったものもないし、考えてみたらすぐにわかった。
カズくんは描いていた絵をどうしてもアタシに見せたくないんだった…
 そういえば今日の昼休みカズくんは「職員室に用がある」って言って、アタシと一緒にご飯を食べなかったんだった。
…そっか、カズくんは放課後に補習があるって知って、慌てて昼休みに絵を移動させておいたんだ。
…そんなにイヤなのかな?
カズくんにとっては、アタシに絵を見られることって、そんなに避けなくっちゃいけないことなんだね。
そりゃ、誰だって他人には知られたくないことの一つや二つあるけど…
そりゃ、アタシだって最初はアタシの家のことを黙っていたけど…
でも…やっぱりちょっと悲しい。
アタシは、もっともっとお互いをわかり合いたいのに。
…こういうのって、ちょっとウザい?
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