君と歩く未知
 だけど、そんなこといちいち気にしていたら「うっとうしい女」だと思われそうだし、アタシは特に気にしていないふりをして自分の絵を描き続けていた。
だけど、そうしていたらまたひっかかることが出てきてしまった。
恋に悩みはつきものなのかな?

 カズくんはあの日以来、あの絵を学校に持って来なくなってしまった。
アタシはさすがに気になったから一応何気なく尋ねてみた。
「ねぇ、この間まで描いてた絵は?もう描かないの?」
カズくんは子どもみたいな笑顔で答えた。
「ううん。ちゃんと家で完成させてくるよ」
アタシはその言葉に驚いた。
なんで?
どうして家なの?
って聞きたかったけど、その言葉が喉から出ることはなかった。
アタシは、怖くって聞けなかった。
自分の感情を、自分の言葉を、押し殺す…
まるで昔のアタシがしていたみたいに。
アタシはただ、「へぇ…」と返すことしかできなかった。
そしてアタシはその時に、文化祭用の絵の一枚目を完成させた。
暖かくって優しいピンクから汚れのない白にかけてのグラデーションを描き、真中に大きな目を描いて、涙を流している…そんな絵。
 その絵はアタシが嬉し涙を流した、あの海に行った日をイメージして描いた絵だからちっとも悲しんでいるようには見えないはずなのに、なぜかこの絵は悲しんでいた。
 ごめんね、幸せな絵にしたかったんだけど…ごめんね。
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