君と歩く未知
 だけどカズくんはそんなアタシの気持ちには気が付いていないようで、笑顔でこんなことを提案した。
「なぁ、二人で合作しない?」
そう言ってカズくんが持ってきたのは大きな、縦はアタシの身長と同じくらい、横は二メートルくらいの真っ白な画面だった。
アタシは、それを無理矢理この小さな部屋に入れて、壁に立てかけるカズくんを呆然と見ながら言った。
「どこでこんなの買ってきたの?!」
カズくんはニッコリ笑って言った。
「先生に頼んで業者に注文してもらったんだ。お金は、有り余ってる部費から出してもらえるんだって」
アタシはびっくりして言葉が出なくなった。
カズくんはそんなアタシに心配した顔で言った。
「…あ、ごめんな。勝手にこんなもん注文しちゃって…イヤだった?」
アタシは首を横に振った。
「違うの。すっごく楽しそう…。カズくんと合作できるなんて嬉しい…ありがとうね、こんなの先生に頼んでくれて…」
アタシは大きな画面を見上げながら言った。
「そっか。良かったぁ…弥生がイヤがるかもって心配してたんだ。…でも、オレ計画性ないからまだ何が描きたいかとかわかんないんだ。良い案ある?」
そのカズくんの言葉を聞いた瞬間、アタシの頭に一つの構図が浮かんだ。
パッと、鮮明に、見たことがあるような鮮やかな色合いが…


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