君と歩く未知
「大丈夫ですか?お母さんはとにかく病院まで行って検査をしてもらった方がいいですね。…すいません、娘さんはちょっとこちらの方に残っていただけますか?」
「え?どうしてですか?…できれば母に付き添いたいんですけど」
既に担架で運ばれている母を見ながら、アタシは救急隊員に尋ねた。
「あっ、刑事さん!こっちです、こっち」
救急隊員はアタシの家の中にずかずかと上がり込んでくる、警察に手招きした。
「君が娘さんですか」
アタシはきょとん…として、ただ首を縦に振ることしかできなかった。
「君のお父さんのことについて知りたいことがあるんだけど、ちょっといいかな」
「えぇ、アタシの父がどうかしましたか?」
警察官と救急隊員の顔がこわばったのが、アタシにもわかった。
冷たくて、重たい空気が流れ始めていた。
ほんの少しの間の沈黙が、永遠のように長く感じた。
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