君と歩く未知
 すると、玄関で大きなスポーツバッグを持って帰ろうとしている、見覚えのある後姿を見つけた。
あれは、きっと竜平くんだ!
アタシは後ろから竜平くんを呼び止めた。
「りゅーへーくーん!」
竜平くんは立ち止まってアタシの方に振り返った。
アタシが元気いっぱいに両手を振ると、竜平くんはニッコリ笑って手招きをした。
アタシは慌ててローファーに履き替え、竜平くんの元まで走った。
「竜平くん、もう部活済んだの?」
サッカー部の竜平くんはいつも忙しく練習に励んでいる。
だからなかなか彼女ができないんだって。
「ううん、サッカー部は文化祭で模擬店するんだ。だから、今日はその準備だったわけ。たこ焼き、明日食べに来いよ」
そう言った竜平くんは辺りを見渡した。
「あれ?弥生、今日は和哉と一緒じゃねぇんだ」
アタシはちょっとしょんぼりして竜平くんに言った。
「カズくんってばさ、アタシに隠しごとしてるんだよ。だから、アタシ怒って先に帰って来ちゃったんだ」
竜平くんは感心したように言う。
「へぇ、お前らって仲良さそうに見えるんだけどな。この間の合作だって最高だったじゃん。一体何がダメなわけ?」
アタシは溜め息をついて、竜平くんに全部話すことにした。
いつもはカズくんと歩いている道も、竜平くんと歩くとなんだか違って見える。
落ち着きがあって、大人っぽい竜平くんと一緒に居ると、アタシも大人になったような気がした。
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