雨の日に、会いましょう。


すっかり頭から抜けていたその出来事をやっと思い出したあたしは

「あぁ、今朝の!」

と思わずつられて声が大きくなってしまった。


慌てて口に手を当てて辺りをキョロキョロ見渡してみたものの
まばらな人影は集中しているのか、あたしの声など微塵も耳に入ってないようだ。

そんな様子に胸をなで下ろすと、彼は改めて口を開いた。



「先程は本当にすみません。慌てて、停めてしまったんですよ。」

「いえ、よくある事なんで慣れてます。」


少し嫌味っぽくなっちゃったかな、と思いつつ彼に視線を上げると
メガネの奥の優しい瞳があたしを見つめていた。



不覚にも、ドキンと心臓が跳ねたのがわかる。

天井まで届きそうな大きな窓ガラスが雨に濡れて館内の床に水玉の影を作る。


あたしの目に映る彼も
水玉に飾られていた。



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