雨の日に、会いましょう。
次の日も、相も変わらず窓を叩く耳障りな雨は降り続いていた。
もちろん、あたしを悩ませる頭痛も変わらない。
どこかまだ寝ぼけたような頭で勤務に向かうと、今日は日曜日で学生が多く見えた。
…多分、受験生なのだろう。
必死に机に向かう姿を見て、昔懐かしい気持ちがあたしに降り注ぐ。
あんな時代もあったな、なんて思うあたしは
既に親の気持ちに近いのかもしれない。
確実に戻れない日々だけがあたしから遠ざかる。
それだけの事。
なのに、それを悲しく思うのはやはり今日も雨だからだろうか。
窓の外に水溜まりを作る雨を横目に小さく溜め息をつくと
カウンターにトン、と置かれた分厚い本。
『先史考古学・縄文文化』
そう書かれた表紙から視線を持ち上げる。
「返却、お願いします。」
昨日の、彼。
東 瑛吉だった。