雨の日に、会いましょう。
「あ、えっと、返却ですね!カード、いいですか?」
慌てていつも通りに業務に取り掛かると
彼も同じように慣れた手付きで図書館のカードを差し出した。
ピ、っと表紙のバーコードを瞬時に読み取り
カードを彼に返す。
30秒足らずの短い返却時間の中、先に口を開いたのは彼の方だった。
「雨、すごいですね。」
「そ、そうですね。」
彼はそのまま受け取ったカードをペタンコのお財布へと押し込むと
「こんな日は、やっぱり図書館が落ち着きますよね。」
そう言って笑顔であたしに問い掛けてくれる。
彼のそんな優しい笑顔に誘われて、あたしも会話を繋いだ。
「考古学、学んでるんですか?すごいですね。」
「あぁ…まぁ、そんな大した事じゃないんですけど。」