雨の日に、会いましょう。


……………


「え?私、がですか?」

「…嫌、ですか?」


どんよりとした雨雲が空を覆い尽くして
今が昼なのか夕方なのかもわからなくなる、そんな梅雨のある一日。

久し振りに図書館に訪れた東さんは、メガネの奥の瞳を瞬きさせる。



「い、いえ!そんな!ただ、私なんかでいいのかと思って…。」

「あはは。そんな気にしなくて大丈夫ですよ。カットモデル、なんてタダでお得ですし。」


難しそうな考古学の本をパタン、と閉じた東さんは

「じゃあ、明日夜迎えに行きますよ。」

と、再び本棚を物色し始めた。



話はこうだ。

東さんのいとこが、駆け出しの美容師で、誰かカットモデルになってくれないか。

と、その申し出が東さん経由であたしにきたという事。



たしかに、伸ばしっぱなしの髪の毛は特に染める訳でもなく
パーマをかけた記憶も随分昔の事だった。



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