雨の日に、会いましょう。


慣れない雰囲気に
あたしは戸惑いながら辺りを見渡す。

久し振りに訪れた美容室は、やっぱりどこかかしこまってしまう。



「こんばんわ。すみません、突然カットモデルなんてお願いしてしまって…。」

「あ、いえ!全然…。」


背後から聞こえた声に振り返ると、
バサ!と音と共にあたしのカバンから本が飛び出した。

心臓が音を立て、そして脳裏に浮かぶ忌まわしい記憶。



「……あの…?」

あたしが落としたカバンを拾い上げてくれた涼子さんが、不思議そうに顔を傾げる。






……あたしは、彼女を知っていた。


いや、一度だけ
街で見掛けた事がある。

脳裏にごびりついて離れない、幸せそうに寄り添うカップル。





彼女は、あたしを振った元彼の恋人。



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