雨の日に、会いましょう。
フラれてから一度だけ、彼を街で見掛けた事があった。
図書館の休館日。
あたしは街の、ある大きな書店に本を物色しに行った。
そんな時、通り過ぎる人込みの中、あたしは見掛けたのだ。
寄り添う、二人の姿を。
どこに居たってわかる彼の横顔は、月日が経っても決して見間違えたりなんてしない。
縛られた記憶に、足を捕られたままのあたしにあの光景はあまりにも辛く刻まれた。
だから、人違いなんて有り得ない。
紛れもなく彼女は
あの時、彼の隣に居た人だった。
「…すみません、やっぱり…あたし…っ。」
「え…?」
「ごめんなさいっ!」
勢いよく彼女からカバンを取り上げて
あたしは外に目掛けて走り出した。
増してゆく痛みを共に引き連れて。