雨の日に、会いましょう。


一通りパソコンに入力をしたあたしは
膨大な量の真新しい本をキャリーに乗せて本棚へ向かう。

そして低い位置にある本を脚立で高い位置に移しながら、空いたスペースに新刊を埋めた。


なるべく読んでもらえるように、と一番取りやすい高さに新刊を並べる。


そんな時、脚立で高い位置にある本棚から一冊本を抜き取ると
バサ、と隣にあった小説が床に落ちてしまった。


…あ~もう。

溜め息混じりにそれを目で追うと、誰かの長い指先がその落ちた本を拾い上げた。



見覚えのあるその姿。



「本は大切に、ね。」

そのままその本をあたしに手渡してくれたのは
言うまでもない、


東さんだった。




チクリ、と古傷が疼き出す。

痛みは光の如く、あたしの体を支配していった。




< 29 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop