雨の日に、会いましょう。


透明傘を開いて、少し離れた駐車場へと足を早める。

ポツポツと傘を叩く雨はすぐにパンプスまで滲んで、あたしを更に憂鬱にさせた。



こんな雨の日は、いつも彼を思い出す。

忘れるべき、そう自分に言い聞かせても
記憶に植え付けられた彼の面影は3年経った今もあたしを手放してはくれない。

…もう、忘れたいのに。



だから、雨は嫌いだ。

この頭痛の原因も
この胸の痛みも

全てはこの冷たい雨のせい。



水不足になったとしても地球がどうなろうと知ったこっちゃない。

とにかく
止んで欲しい。

泣くのは、人間だけで十分じゃない。




そんな事を考えながら駐車場に着いた時には
ジーパンの裾もパンプスもすっかり雨に濡れていた。




< 3 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop