雨の日に、会いましょう。


慣れた手付きで運転席の扉を開けて車内に乗り込む。

そして予め用意してあった違うパンプスに履き替えたあたしは
勢いよくエンジンを掛けてどしゃ降りの雨の中、車を走らせた。



目的地の図書館までは車で約20分の距離。

そこに勤め始めたのは、20歳になった直後の4年前。


それを職業に選んだ理由はただ一つ。

単純に本が好きだから。



本はあたしにとって特別だ。

ページをめくる度に変わる世界は、あたしをこの醜い現実から遠ざけてくれる。


どんなに忙しくても
どんなに眠たくても

仕事終わりの読書はあたしの唯一の癒し。

時には湯船につかりながら読書をしたり、寝る前の時間を本に費やすのが日課だ。



だけど、そんな大好きな本でさえ開く気にはなれない程、
あの日のあたしは涙で心が沈んでいた。


…生きてる、なんて面倒くさいと思うくらいに。



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