雨の日に、会いましょう。



『別れよう。』

彼の口から紡がれる別れの言葉が、すぐには理解出来なかった。


頭が真っ白になって
あんなに大好きだった彼の笑顔が思い出せない。

その替わりに、沈痛な面持ちで眉をしかめた彼はそれでも尚、あたしに問い掛けた。


『…別れよう。』

もう、ダメなんだ。
まるでそうあたしに訴えるように俯いたまま彼は視線を合わせてはくれなくて。



『…どうして?』

やっと口をついて出た言葉に、涙がポタリと頬を濡らす。



『…ごめん、麗乃。』


あたしの、何がいけなかったの?
あたしの、何が足りなかった?

頭を駆け巡る言葉は
喉の奥に引っ掛かってなかなか外へ出ようとはしてくれない。



『…俺、他に―――…』



それからの記憶は途切れ途切れで、繋ぎ合わせようとしても思い出せなかった。


お揃いの思い出も
彼と思い描いてた未来も何もかも、あたしは失ってしまったんだ。




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