雨の日に、会いましょう。
「…何か?」
少しだけ下げた窓ガラスから、その人の傘が見える。
そしてその隙間から車内を覗き込んだ男は
「すみません、その車僕のなんです!今、退しますから!」
と、あたしの駐車スペースを陣取っている車を指差した。
「…あ、でも他停めますからいいですよ?」
「いえ、社員専用って書いてあるのに停めた自分がいけないので!」
「え、あ!ちょっと…。」
男はあたしの言葉に耳を貸さずに、自分の車へと走り出す。
そのまま車に乗り込むと再び違う場所へと車を発進させた。
…律義な人。
そう思いながらも
せっかくのご好意にあたしはその場所へと車を停めた。
そしてカバンを肩に掛けて濡れた傘を差して外へと出る。
お礼を言おうと見渡してみたけれど、その男の姿は見当たらない。
…まぁ、いっか。
小さく息を吐き出して
あたしは車にロックを掛けると、その足で図書館の裏口へと向かった。