好きと言えなくて
お昼ご飯を食べて、オッチャンたちは、またパドックの方に消えていった。

私たち三人は、レースをぼんやりと眺めながら、お喋りをしていた。三人でお喋り……というよりは、越智さんがあれやこれやとしてくる質問に、私が鋭いツッコミを返しているだけ。

正義は、『ふたりの関係』をポロッと話してしまうことを恐れてか、いつもより口数が減っていた。

毎年『競馬ツアー』は楽しみだったけれど、こんなにつまらないと思ったのは、初めてやった。

次の秋からは、オッチャンたちについていってもっとレースを楽しもうかな?

あ、でも、正義と越智さんがふたりっきりになってしまう!

アカンアカン……! 思わず頭をプルプルと横に振った。

「どうしたんですか?」

越智さんがキョトンとして、私をみつめた。

『アンタのせい』とも言えないし……モヤモヤしながら、笑顔を返した。


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