好きと言えなくて
ヤキモチなんかやいてない
「おはようございます」

翌朝、いつものように出勤をすると、越智さんが店先の掃除をしていた。

「松山さん、おはようございます!」

その光景は見慣れてはきたものの、その姿に新居浜さんを重ねる。そして昨日の、恋人気取りをした越智さんを思い出す。

ノリのいい子なんやろう……。正義のこと、なんとも思ってへんやんな? 正義かって、越智さんを……。

「おはようございます」

店先でぼんやりとしている私の耳に、元気な声が届き、ハッとした。

「おはよ……」

「喜多さん、おはようございます!」

私が振り返り、挨拶をしようとしたところ、ほうきとチリトリを投げ出した越智さんが駆け寄ってきた。

な……なにっ? その笑顔!?
めっちゃキラキラしてるやん!?

「お……おはよう……」

小動物は、怯えているようにも見えるけれど、どうやら私は、おじゃまなようだ。

なんだか面白くなくて、なにも言わずに奥の事務所に入っていった。

チラッと店先に目をむけると、ふたりは仲良くおしゃべりをしている。事務所に背を向けて立っている正義の表情はわからないけれど、越智さんの横顔がキラキラしているのは、よく見えた。

小さな金物店で、若い男子は正義しかおらんからやろう……そう思うことにした。

「配達、行ってきます」

しばらくすると、正義が軽トラの鍵を取りに事務所へとやってきた。

「いってらっしゃい」

私は目も合わさず、ぶっきらぼうに挨拶をした。


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