好きと言えなくて
「お疲れ様です。お先です」

「お疲れさん」

定時なのに、店には社長と宇和島さんだけ……。

「喜多くんと越智さんはまだ帰っていないんですか?」

さりげなく聞いてみる。

「もうすぐ帰ると思うけれど……もしかしたら、ふたりで出かけたかな?」

えっ!? 社長、冗談ですよね?

「若い子はいいですね」

心中、穏やかじゃないくせに、冷静に返した。

事務所を出ると、ちょうど正義が軽トラで戻ってきた。

「葉子さん、お疲れ様。もう帰る?」

「……うん」

「これから、メシ行こう? いつもの店で待っててよ」

「……わかった……」
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