好きと言えなくて
『葉子さん、オレに恋愛を教えて下さい!』

喜多くんの小動物のような目は潤み、頬も耳も熱を帯びたように、赤く染まっていた。

『恋愛……って?』

つられて私まで頬が赤くなる。

『オレ、女性と付き合ったことがないんです。葉子さんの……彼氏にしてもらえませんか?』

『私? 私でいいの!?』

マンションの近くの桜が夜風に吹かれ、季節外れの雪を降らせた。

花びらがひとひら、喜多くんのバイクにふわりと舞い降りた。

『葉子さんが、好きなんです』

告白されたの、久しぶりやなぁ……。胸の奥がくすぐったくなった。

『私なんかで……よかったら』


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