好きと言えなくて
西条さんたちが帰る頃に正義が戻ってきた。

「正義くん、早いな」

「すみません……荷物をひとつ、積み忘れてたもんで……」

「従業員の方ですか?」

西条さんが、社長に聞いた。正義は目を丸くして、長身の西条さんを見上げていた。

「主に配達をしてる、喜多くん」

「あ……喜多正義です!」

社長に紹介され、正義が頭を下げた。

「夕陽化成の営業を担当しております、西条善臣です。よろしくお願いします」

西条さんはその姿に優しい眼差しを送ると、丁寧に挨拶をした。

握手、せーへんねんや?

「では、失礼します。松山さん、また……」

「えっ? あ、はい……」

『松山さん、また……』って、どういう意味なんやろ? そう思いながら、会釈をした。

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