好きと言えなくて
西条善臣という男
毎日の空模様が気になる季節が近づいていた。

「おはようございます」

事務所に元気な声が響いた。

「おはよう」

まわりに目を配り、ふたりっきりなのを確認してから手招きをした。

「なになに? モーニングキス?」

「ちゃうわ。梅雨が近づいてきてるから、お弁当は当分ナシ、ね?」

「えーっ……!」

正義が、子どもみたいに口をとがらせた。

「食中毒とか心配やからね。たまに一緒にランチしたるから、ね?」

「はーい」

子どもみたいにとがらせた唇を、そっと私の唇に押し当てた。

「こらっ!」

「へへへっ!いってきます」

軽トラの鍵をクルクル回しながら、正義が出ていった。

「ふふっ……」

そっと唇に触れると、じんわりと正義の温かさを感じた。


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