好きと言えなくて
「葉子ちゃん、やるなぁ! あんまり男、泣かせたらアカンで」

社長のひと言に、チラッと正義を見ると、口と目を開いて、完全に動揺していた。

「いや、違います。西条さんとは、別に……」

『一目惚れしました』

西条さんの言葉が、耳に響いた。

「ねぇ、喜多さん。この際、彼女と別れて私と付き合いませんか!?」

はっ!? な、なにを言っていやがる! この小娘が!

「お、越智さん……冗談はこれくらいに……ねぇ?」

正義は、社長に視線を送った。

「うららちゃん、そんな話はここでしても、ね? 正義くん、困っとる」

正義のSOSを受け止めて、社長が丸く収めようとした。

「でも私、喜多さんが好きなんです」
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