好きと言えなくて
わからない気持ち
越智さん、いつの間にか『正義さん』って呼んでるし! もしかして、正義も『うららちゃん』って呼んでるのか?

「松山さん、どうかしましたか?」

後ろから越智さんに声をかけられてハッとする。イライラして、無意識にボールペンを連打していたのだ。

「あ、これは指の体操」

越智さんの顔も見ず、何事もなかったかのようにサラッと応えた。

「そうですか。私と正義さんに、ヤキモチでもやいているのかと思った」

「ヤキモチ?」

振り返ると、越智さんが笑っていた。かわいらしい顔で、悪魔のような笑みを浮かべていた。

「松山さん、ずいぶんと余裕があるみたいですけれど、恋愛は、弱肉強食ですから、ね?」

「越智さん、私になにが言いたいの?」

「私、今夜、ホンキで正義さんをおとします」

『ホンキで正義さんをおとします』

私の鋭い視線を跳ね返すように、越智さんが放った言葉。

正義を……おとす?
十八の小娘が……なにを言ってるねん!?

「おとせるものなら、どうぞご自由に」

強気な言葉を返したが、私は、明らかに動揺していた。それをなんとかこらえるために、奥歯をギュッと噛みしめていた。

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