好きと言えなくて
「松山さん」

ティータイムになり、越智さんが私に缶コーヒーを買ってきてくれた。

「あ、ありがとう……」

「今朝は……生意気なことを言って……すみませんでした」

越智さんは、素直にぺこりと頭を下げた。

「……私もちょっと……キツく言ったし……悪かったと思ってる……」

「それなら、私と正義さんのこと、応援してくれますか!?」

応援って、なんやねん!?
それとこれとは別や……っちゅうねん!

「今夜、彼をおとせるなら、応援してあげてもいいかな?」

「松山さん凄い! 大人の女の貫禄ですね! 私、頑張っておとします!」

せいぜい、頑張って下さい。

「お疲れ様です……」

渦中の人が帰ってきた。

「お疲れ様」
「お疲れ様で~す」

私と小娘の声のトーンが全然違う。正義の視線を感じたが、敢えて受け止めない。

このままでは、正義が……越智さんの誘いを受けてしまうかもしれない。

それやのに、私……素直になれない。

『好き』

ただひと言、そう伝えたら済むことやのに。
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