好きと言えなくて
私は、駐車スペースで小さくなったまま、本を読みながら時間を潰した。



……それにしても……遅くない?



そう思ったとき、腕時計が午後八時を示していた。丼モノ屋でそんな長い時間、潰せない。

まさか!?
私は、駐車スペースから駆け足で丼モノ屋に向かった。

建て付けの悪い戸に、いつもはないイライラ感が募る。

「いらっしゃーい」

「おかみさん、彼は……来てないですか?」

乱れる息を整え、冷静になって質問した。この店の常連だから、名前は知らなくても顔は覚えられていた。

「ナニワヤさんの配達の子やんね? 来てないよ」

やっぱり!

「わかりました。ありがとうございました」

私は、建て付けの悪い戸をゆっくりと閉めた。

社長が嘘をつくはずがない。

あの小娘……私になにか話すやろうと、社長に嘘の情報を流したんや……。

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