好きと言えなくて
「もしかして、電話をしてきたのは……別れ話?」

正義らしくない、テンションの低い声で聞かれる。

「正義は、私と別れても若くてかわいい子が、いるやんか?」

違う。そんなこと、言いたくない。

「今日も、ご飯食べて……抱いてきたんやろ!?」

「よっ! 葉子さん! なにを言ってんの!?」

正義は、顔を真っ赤にして目を泳がせた。

「確かに、商店街で蕎麦食べた後『ミナミで飲もう』って誘われて、電車には乗ったけれども」

十八の小娘が『ミナミで飲む』って……未成年やんか!? 正義、まんまとひっかかって……。

「飲んだ勢いで抱いてきたんやろ?」

「……あほっ!」

正義は、私を抱き寄せると、強引に唇を奪った。

「いくらなんでも……怒るで、葉子さん! オレ、酒クサいか!?」

正義が怒ったのを初めてみた。私は、首を振ったと同時に涙がこぼれた。

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