好きと言えなくて
夜景が綺麗に見える場所まで、バイクを走らせてくれた。ずっとずっとつかまっていたい背中から、そっと離れた。

「そもそも、正義が悪いんやから!」

「オレ? なんで?」

「だって連絡、くれなくなったやん?」

「それは、葉子さんが西条さんといい仲やと思ったから」

「違うやろ? そっちがあの小娘と……」

「小娘?」

思わず吐いた言葉を聞いて、正義が笑い出した。

「あの小娘は、オレみたいな恋愛初心者には、手におえん」

「……キス、したんやろ」

「した……って言ったら?」

正義が悪魔のような笑みを浮かべた。私が飼ってた小動物は、ちょっと飼い主が変わっただけで、小悪魔になったようだ。

「イジワル……」

そう呟くと、ギュッと、ギューッと、抱きしめてくれた。


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