好きと言えなくて
小さな部屋でふたりっきりになると同時に、正義は私をベッドに押し倒す。

「葉子さん……葉子さん」

何度も私の名前を呼ぶ。目を閉じて、正義の優しい愛撫に心酔する。

「……葉子さん……」

呼びかけたと同時に動きが止まり、私がゆっくりと目を開ける。

「どうしたん?」

正義の頬に優しく触れると、潤んだ目から涙がこぼれた。

「もうどこへも行かんといて? オレは……葉子さんしかいてへんから……」

…そんなかわいい目して、そんなセリフ、吐かんといてよ?

……泣いてまうやろ?

「私があんたを捨てるわけないやろ?」

涙を隠すように、私は、正義を引き寄せ、抱きついた。

「ありがとう。好きやで葉子さん」


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