好きと言えなくて
めっちゃ綺麗……かぁ……。正義のひと言がうれしくて、頬が緩んだ。

披露宴のテーブルに、若葉と同じソフトボール部だった子たちが座った。久しぶりの再会。その中には、私の元カレの姿が……。

商業高校だったから、男子は少なかった。元カレの川之江太は、ソフトボール部のマネージャーをしていた。太……と言う名に反して、痩せ型の長身だ。あの頃と変わらない。

……体型は変わらないけれど……あの頃より大人の男性になっていた。爽やかな笑顔に、ほんの少し、大人の色気を纏う。

「葉子ちゃん、綺麗になったな」

「太くんも、かっこいい」

見つめ合って笑うと、あの頃のふたりに戻れた気がした……って、あかんあかん! 私には、正義がいてるし、太くんかって、彼女くらいいてるやろう。

「これ終わったら、ふたりで飲み直さへん?」

太くんは、テーブルの下で名刺をそっと差し出した。私は、涼しい顔でそれを受け取った。

「今日は……ごめん。また連絡するわ」

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