好きと言えなくて
「おかえり。今日、お弁当忘れていったやろ? 食べる?」

「……うん」

さっきまでうららちゃんが座っていた席に、お弁当とお茶を用意した。

「どないしたん? 座っていいよ」

「あ、うん……」

正義は座って、お弁当に視線を落とした。

「今日は珍しく遅刻してくるし……体調悪いんか?」

「ううん……葉子さん?」

「なに?」

正義の目に、いつもの輝きがないような気がした。気のせいであってほしいけれど……。

「葉子さん、オレのこと……好き?」

いきなりの質問に顔が火照った。

「そんなこと……言わんでもわかってるくせに!」

私が『好き』ってよう言わんこと、わかってるくせに……正義、どうかしてる。

「それに、なんとも思ってない子に、毎日お弁当なんか作らへんよ」

「そっか……へへっ……いただきます」

正義は、照れ笑いを浮かべて、お弁当を食べ始めた。もしかしたら、昨日のこと、なにか気にしているのかもしれへん。

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