好きと言えなくて
「うららちゃんも一緒って……どうなってんの?」

宇和島さんが、小声で私に聞いた。社長の声はデカイから、宇和島さんにも丸聞こえだったようだ。

「……さぁ?」

とぼけながらお茶をいれていると、応接室のドアが開いた。

「宇和島くんと葉子ちゃんも、おいで」

社長のひと言に、ふたりで顔を見合わせて、応接室に入った。

「西条くん、もういっぺん、さっきの話をしてもらってもええか?」

「あ……はい……。実は、彼女が……妊娠しまして……」

「いつの間に……」

宇和島さんは、昨日の私と同じ反応をした。

「僕は、結婚する気でいます。ただ、仕事は辞めさせたいんです。車の運転や荷物の運搬など、妊婦にはちょっと……」

「おめでたい話やし、それはやむを得ませんなぁ……」

宇和島さんは、私にチラッと視線を送った。

「私も、宇和島さんと同じ意見です」

「急な話で申し訳ないですが……今月いっぱいで……」

寿退社か。羨ましいかぎりやわ……。

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