好きと言えなくて
正義のバイクで、家まで送ってもらった。

「ありがとう」

正義は、なにも言わずに俯いたまま。

「もう! 正義! そんなことで悩まんといて? 私まで暗くなるやんか」

「ごめん」

「そんな暗い正義、いやや。他の人と浮気するで!」

「え、ホンマに?」

軽い冗談のつもりが、いつになく真剣な眼差しを向ける、正義。

「浮気されたくなかったら、いつもの明るい正義に戻って?」

そう。私は、正義のかわいい笑顔が、大好きなんやから。

「浮気、されたくない……」

そんな、哀しい目で私を見やんといて? 抱きしめたくなって手を伸ばしたけれど、すぐにひっこめた。やっぱり、自分からは恥ずかしくて……。

「ほな、また明日!」

私は、そっけなく言うと、パタパタと走ってマンションに入った。

明日は、笑顔の正義に会えますように。

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